木原滋文の島人コラム Vol.34

 

日日是好日 (7) 「気になる言葉三大噺 国益、リーダーシップ、決断力」

沖縄の基地移転問題に関する議論を聞いていて、気になる言葉が盛んに出てきた。
普天間基地を名護市に移転することは、前政権による日米合意によるものだから、それにたがうことは、日本の安全保障上、「国益」にならないというのである。
さらに、当該地区の人々の意向よりも、総理は「国益」を守るため「リーダーシップ」を執って「決断力」を発揮してもらいたいというものである。
後の二つは、まあ分からないでもないが、最初の「国益」という言葉に引っかかってしまった。

「国益」って何?
戦国時代の戦(いくさ)にしても、日清、日露から太平洋戦争に至るまで、「国益」を大義名分にしてきたことは、歴史の示すところである。
以前、南日本新聞のコラムに書いたことがあるのだが「国家があって国民がいるのか、国民がいて国家が存在するのか」という命題である。
これは、一概に答えを出するは難しいにしても、事このことについては、簡単に「国家あっての国民」という解釈はして欲しくない。
「国益」の「国」は、「国民」の「国」であって、「国家」の「国」と思うからである。
国民の生活の安全を保障するのが国家の務めではないだろうか。
第二次大戦末期から六十数年間、沖縄の人々は「国益」の名の元にどれほど多くの苦しみを味わってきたというのか。
いわゆる本土の人々はそのことに思いを致してほしい。

テレビ放映中の「坂の上の雲」は、日清、日露の戦争への過程はまさしく「国益」の名の元に遂行された戦争であることを如実に物語っている。
こういう見方は、制作者の意図とは違うかもしれないが。

鳩山総理よ。
国民にとっての利益を考えて「リーダーシップ」を発揮して「決断力」を示してもらいたい。

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