木原滋文の島人コラム Vol.9

 

杉山物語 (1)

「はじめに」

二月になって、杉山の下草刈りを始めた。
屋久島では、下払いと言う。
一年程前、地元の森林組合に二回目の除間伐作業をしてもらっていた。
下払いの必要もないぐらい木は大きくなっているのだが、妻に促されて、木に巻きついたカズラ(名前は不明)を切るつもりで山に行ってみると、想像以上に雑草が茂っていたので、これを刈る作業を始めた。
作業をしながら考えたことをしばらく書いてみたい。

「間伐材の利用を・・・と言うけれど」

屋久島の総面積の90パーセント以上が森林で、その大部分は国有林である。
昭和30年代から40年代にかけて、屋久杉伐採やパルプ用の広葉樹伐採、木炭生産、伐採跡地の造林など林業も他の一次産業と同等あるいはそれ以上の産業としての位置を占めていた。
しかし、資源の枯渇、需要の減少などでみるみる衰退していった。
現在は、他の一次産業もそうであるが、特に林業に従事している人は極めて少ない。

民有林も、戦後の木材需要の波に乗って、ほとんど伐採され、その後植えられた木が四十年から五十年以上に育っている。
しかし、木材価格の低迷は、人々の造林意欲をそぎ、除間伐はおろか、下払い、枝打ちはなされず、ほとんどの山が放置に近い状態であった。
最近十年程前から、森林の持つ自然環境保全の役割が、特に人工林(針葉樹林)の放置が水害の原因になるなど見直され、国の事業で除間伐などが行なわれるようになった。

と同時に、間伐材の利用が叫ばれ、昨年、国有林の間伐材が、屋久島で初めて出荷される試みがなされたが、コストの面でまだまだ楽観は出来ない状態である。
私の山でも、切口の直径が20センチから30センチ以上の木が切り倒されたままになっている。
植樹から下払いまでした身には、もったいないというか、悔しい思いがするが、搬出の手間を考えるといかんともし難い。
採算が合わなければ止むを得ないだろう。
薪風呂の我家でも、道路まで木を運び出すエネルギーは、今の私にはない。

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