岩山郁代(旧姓)の「なひけ?」の話 Vol.1

 

「同窓会」

久しぶりに帰省した友人を囲み、
小さな同窓会をひらいたときのことである。
帰省した友人の言葉に私の酔いが覚めてしまった。

「うちの夫が屋久島を気に入っていて、
 『屋久島に家を建てたい』なんて言うのよ。
  ふざけてるでしょ」

「うちの夫も言ってた!冗談じゃないわよね」

意気投合している2人の会話の周囲で、
地元に残っている友人が言った。

「いいじゃない。屋久島いいところよ」

すると、今度は屋久島の悪口がはじまった。
あれがない・・・これがない・・・、
こういうところが最悪だ・・・等々。

 

ちょっと待って・・・。
そんなに屋久島って悪いところばかりだった?
自分の故郷なのに・・・。

それじゃあ、ここで生活している私達は一体何?

まるで屋久島に住んでいる今の私自身まで
否定されたような気持ちだった。

楽しい飲み会が一変してしまい、
足取り重く安房橋を渡り、
家に戻ったことを今でも覚えている。

 

しかしあの時、地元の友人が言っていた
「屋久島いいところよ」という言葉に
賛同しきれない私がいたのも正直な話だ。

なぜならその数ヶ月前まで、
早く屋久島を出たくてたまらない自分がいた。

これがきっかけとなって私が当時取った
「Uターン者を対象にしたアンケート」がある。
その中で、屋久島の嫌な部分の代表例として

 ・周囲の目がうるさい

 ・コンビニやデパートがない・・・等々。

 

例にもれず、私もこの結果と同じ意見だった。

周囲がうるさい。
そして、以前島外で勤めていた際、
毎日帰りに寄っていた夜中のコンビニがない寂しさ。
そして、離島という閉ざされた中で生きていく
ということの絶望感。
早くここから出たい一心で、お金をためるために働き始めた。
つまり、その数ヶ月前まで、
彼女たちと同じ屋久島観を持っていたのである。

 

しかし、その時の勤務先が運のツキだったように今は思う。
町立の博物館に勤務したことにより、
私は改めて屋久島のことを知らなければならない立場に
なってしまったのだ。

 

そして初めて気付いた屋久島の別の顔。
高校時代に体験した苦しいだけの登山ではなく、
楽しい登山を知った。
そして、挨拶するのも面倒だと思っていた近所のおじちゃん、
おばちゃんの別の顔。
そうか、こんな近くにいろんな達人がいたんだ・・・。
あのおじちゃんの人生観はすごい。
このおばちゃんの特技は・・・なんていう新しい発見の日々。
コンビニの立ち読みより興味深いものがたくさんあった。
いつのまにか、「屋久島はつまらない」なんて、
思わなくなっていた。

 

あれから10年が過ぎた。

今年は中学校の同窓会が8月にある。

どんな話に花が咲くのだろう。

そして、友人たちの屋久島観はどう変化しているのだろう。

 

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