岩山郁代(旧姓)の「なひけ?」の話 Vol.11

 

夫の育休(2)

「いやあ〜、育休中って言うと、
 みんな反応は様々なんだなあ〜」
ある日、買い物から帰ってきた夫は、
笑いながらも少し複雑な表情を浮かべながら言った。
まず、家賃を支払いに不動産屋を訪ねたところ、
60歳代である社長さんに
「休みですか?」とたずねられ、
「いや、育休中です」と答えると次のように言われたという。
「男が育休を取るなんて、俺達の時代じゃ考えられない。
 そんなもん取ったら男の風上にもおけねえ奴だって、
 みんなから指さされて笑われてたよ。
 時代がかわったもんなんだな〜」
すると、近くにいた社長の奥さんや事務の女性らが
「いやいや、男性が育休をとるなんて、
 とってもいいことじゃない」と反論してくれ、
最後に「がんばってね」と、励まされたという。
(その後、社長さんは奥さんに
 「あんた、育児なんてしなかったじゃない」
 と責められていたという。)
その後、近くの商店街へ向かい、
顔なじみの金物店のおばちゃんと話をしていると、
話を聞いていた見知らぬおばちゃんが
「えらいねえ〜。がんばりなよ。」
と励ましてくれたという。
どうやらこの反応は、年代もさることながら、
女性と男性に分かれるようだ。
育児の苦労を知っている女性は、
男性が育児をすることをとても好意的に思っている。
反面、男性(特に昭和一けた生まれ)は、
「男子厨房に入るべからず」的な考えで、
仕事は男性、家のことは女性・・・
という考えが抜け切れていない。
私は夫の話に耳を傾けながら、ふとたずねた。
「それで、どう思ったの?」
夫は腕を組みながら、気難しい顔で答えた。
「女性の意見が意外だったなあ。
 『昔自分達が苦労したから今の女の人は楽で良いねえ』
 なんていう意見がでるかと思ったけど、
 むしろ今の女性を励ましてくれる意見が多かったもんなあ。
 企業戦士とかいって、
 会社に滅私奉公して家庭を顧みない夫を抱えながら、
 昔の女性は本当に子育てに苦労したと思うよ。
 それに引 きかえ爺ちゃん連中はしょうがねえなぁ。」
 
ふむ、ふむ。
やっぱり社会全体が温かい目で
子育て中の夫婦を支えていかないと、
男の育児参加は今後も伸びないだろう。
現代の夫婦は核家族化に伴い、
さまざまな事情をかかえているのだ。
私達のように、出産後、
2人だけで乗りきらなければならない家庭もある。
そういう様々な形態を受け入れられる
懐の深い社会にしていかなければ・・・と、
考えさせられる出来事であった。

 


■柴又駅
 ここから50メートル程行ったところに商店街がある

 

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