岩山郁代(旧姓)の「なひけ?」の話 Vol.4

 

ポイ捨て老人

 

「屋久島の人って、よくゴミをポイ捨てするよね!」

「そうそう」

・・・島外から移り住んできた友人達の声である。

 

否定できずに、小さくなる自分。

 

「屋久島の人は・・」と否定的な話をされると、

ついついムキになって反論するという、島人根性を持つ私だが、

このポイ捨てについては、私も同じ意見だった。

 

年寄りのマナーが特に悪い!

腹立たしげにそう思っていた矢先、
こんな話をする70歳代の平内に住む女性に会った。

「昔はおしめも茶碗も、なんもかんも川で洗うたとよ。
  赤ちゃんのうんちが付いたおしめもぱあ〜と流してね。
   そいを魚が食べてね。洗剤なんかもちろん使わんよ。
    そいやから川下では、ふっとか(大きな)鰻が
     わざいか(たくさん)獲れて、美味かったよ〜。」

 

すばらしい!

 

これぞまさしく循環型社会!
・・・そう思った時に、はたと気付いたことがある。

 

あれ?ちょっと、待って。
その頃って、ゴミと呼べるものがどれくらいあったの?
残飯にしても、赤ちゃんのうんちにしても、
自然に分解されるものばかり。

ビニールやプラスチックなんて、なかった時代だ。

 

たとえば屋久島の郷土料理にしてもそうだ。
「かからん団子(*注1)」や「つのまき(*注2)」などは、
すべて植物の葉で包んで作る。
そのため、食べた後、
野山に捨てても自然に分解されるものばかりだ。
ビニールだのプラスチックだの、アルミだの、
そんな物が数多く出てきたのは
今の70歳代の人が成人になってからの話である。

つまり、お年寄りにとって「ポイ捨て」という行為は、
自然を汚すということに直結した行為では決してなかったのだ。
しかし、当時の生活習慣は変わらないのに、
使う物が変化したため、話がややこしくなってしまったのだ。

 

このことに気付いた時、
それまで「ポイ捨て老人」を見かけるたびに腹を立てていたのが、
ほんの少し見方が変わった。

 

確かに「ポイ捨て」はよくない。

しかし、「ポイ捨て老人」を批判する前に、
考えなくてはならないことがあるような気がする。

 

便利さに踊らされ、
分解されない大量のプラスチック等を使い、
簡単にゴミとして「ぽいぽい」捨てるという
私たちの暮らし方を。

 

地球にとっての「ポイ捨て族」は、
実は私たちの方かもしれない。

 

(*注1) 「かからん団子」

地元で「かからん葉」と呼ばれる植物(サルトリイバラ、サツマサンキライ)の葉で包んで作るよもぎ団子。

 

(*注2) 「つのまき」

灰汁につけたもち米をダチク(ダンチク)の葉で包んだもの。小豆を入れたものもある。巻いた形が角を出しているように見えるので「つのまき」と呼ばれる。そのまま食べたり、きなこや黒砂糖等の砂糖をつけて食べる。

 

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