岩山郁代(旧姓)の「なひけ?」の話 Vol.5

 

新婚生活 in 屋久島 (1) 〜雉(きじ)編〜

 

遠距離恋愛、遠距離結婚を経て、
ようやく私達が一緒に生活できるようになったのは、
2001年の10月からだった。

役場勤めの私と、学生の夫が屋久島で共に生活をはじめたのは、
両親がリフォームしてくれた畑の小屋だった。

父は仕事の傍ら、たんかんやぽんかんをつくっていた。

そのため、朝早くからトラックで畑に来ては、
草刈りだの、肥料撒きだのと、
しょっちゅう小屋の周辺を行き来していた。

そのたびに律儀にも夫は毎回、
どんなに朝早くても顔を出していた。

 

そんなある朝のことである。
いつものようにトラックで駆けつけた父が
外でなにやら叫んでいる。

夫が顔を出すと

「きじは、食わんか?(食べないか)」と、父。

「き、きじ・・ですか?」と夫。

「く・・食いたいですけど、どうすれば・・」

2人の会話が耳に入り、私も顔を出してみた。

すると、男2人が雉の毛をむしりながら、談笑していた。

不思議な光景である。

父の話によると、
雉が畑の網にひっかかって、死んでいたらしい。

関東生まれの夫には珍しいだろうからと、
そのまま持ってきたのだが、
私も夫も、鳥をさばいたことは一度もないから、
どうやっていいのかわからないのだ。

父と夫は雉の毛をむしった後、残りの毛を火であぶり、
その後内臓を取り出し始めた。

「これが肝臓で、これが腎臓だ」と、詳しく説明する父。

「なるほど。お父さん、すごいですね〜」と感心する夫。

「それ、やってみろ」と、父。

「はい、まかせてください」と、夫。

そんな2人をほほえましく思いながらも、
多少の迷惑を感じつつ、雉料理に頭を悩ませる私。

こんな風に、私達の屋久島での新婚生活ははじまった。

 

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