兵頭昌明の四方談義 Vol.20

 

島の景観について

旗指物やのぼりは、国や時代を問わず使われてきた歴史あるものですが、最近の屋久島の風景でも、のぼりはなくてはならないものになりつつあります。

交通安全にはじまって、「うどん」に「冷やし中華」、「カレー」に「パスタ」、祭りを盛り上げるためにも道路際に多くののぼりが立てられています。

人の気を引き、目立つために立てたのぼりも、今や、風景のなかに埋没し、特に目立つこともなく、何のために立てているのかわからないものもたくさんあります。それどころか、風雨にさらされ、よれよれになってかろうじて棒にしがみついているのぼりは哀れを誘います。

目立ちたい、客の気を引きたいというのは商売人の常。しかし、そののぼりやけばけばしい看板が景観を損ねているとしたら・・・・・。

屋久島を訪れる観光客には山や川といった自然景観ばかりがもてはやされ、里の風景に目を向ける人が少ないように思われてなりません。旅の思い出は自然ばかりでなく、その街の色であり、形であり、匂いであり、音です。そこに暮らす人々の暮らしぶりそのものが、旅に忘れがたい陰影を与えるのです。

観光を主たる産業のひとつと考えるのならば、「癒し」という言葉に頼ることなく、落ち着きある空間を取り戻すことが大前提なのではないでしょうか?

私たちは観光客の目を意識することに夢中になっているうちに、大切なものを忘れてしまっているのではないでしょうか?

(2006.8.18発行のレポート27より、加筆訂正)

 

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