兵頭昌明の四方談義 Vol.22

 

縄文杉の受難

大々的な募金キャンペーンの甲斐あって、屋久杉自然館で「いのちの枝」の展示が始まるそうです。雪の重みで折れた縄文杉の枝です。

雪の重みに耐えかねて枝が折れたり、台風で徒長した枝が折れたりするのは、季節ごとに繰り返されてきた当たり前のことで、そうであるからこそ、屋久杉をはじめとする屋久島の森の木々が長寿であるのだろうといわれています。

江戸時代、伐るに値せずという理由で放置されたものが、突然脚光を浴びて道が作られ、見づらいということで周囲が切り払われ、人々が根を踏み表皮がはがされるということでロープが張られ、流出した表土を補うということで登山客に里の微生物いっぱいの砂をひと握りずつ運ばせ、さらには根方に木片を敷き詰め、終いには舞台をつくり、人間の人生芝居を縄文杉にみせるということになりました。

かつて、縄文杉までのロープウェー輸送が計画されましたが、これを中止した意味が生かされていないような気がしてなりません。

山中でゆっくりと土に還るべき枝までも、里に下ろされ、観光資源として大金をかけて展示される現状。幹から離れてもなお、縄文杉に休まる場はありません。

(2006.12.12発行のレポート32より、加筆訂正)

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