林野庁の忘れもの
国有林間伐材の島外出荷がメディアを賑わしています。
一連の報道に感慨を覚えるのは、私だけではないでしょう。
1960年代、パルプ材として国有林の広葉樹を伐採し、樹種転換と称して杉を植えまくった歴史を私たちは忘れかけていました。その杉が日の目を見る時がやってきたのです。
林野庁は「地材地建」に力を入れているようですが、何をか況や。林野庁関連施設を始め、公共の建物の多くは、島外の建材でほぼまかなわれています。
また、林野行政の遺物には、これら材木を搬出するために作られた「林道」もあります。
休日、気の向くままに車で山を走ると、次々、知らなかった道に行き当たり、通行禁止になっている箇所も含め、把握し尽くせないほどです。
島民はおろか、観光客が使うこともまれな道が多くあります。近い将来、この遺物は貴重な観光資源となるかもしれません。箱もの建設や道路の拡張にはげむより、すでにあるものを生かす、または、メンテナンスすることで、環境に負荷の少ない観光が可能になるのではないでしょうか。
さらに、林野行政を司る林野庁は、これからの屋久島観光のあり方を左右する重要な決定権を持っています。緊急を要すると思われる入山数の規制、入山領域の規制は、林野庁の意向を無視しては実現しないのです。
もうひとつの忘れ物は、「ダイオキシン」を含んだ除草剤2,4,5-Tです。ベトナム戦争で枯れ葉剤が使われていた時期、全国の国有林でも除草剤として使われていたものです。枯れ葉剤の問題が取りざたされ始め、屋久島を含む各地の国有林で、埋設処分されました。国有林の割合が高い屋久島では、他の地域に比べても、大量の除草剤が埋設されたといわれています。
「寝た子を起こすな。屋久島のイメージに差し障る」という向きもありますが、悲しいかな、それは厳然としてそこにあるのです。かつて上屋久町議会の質問を受け、林野庁は「将来、無害化する技術が開発されたあかつきには、必ず島外に運び出します」と回答しました。
杉材とともども、こちらも、どうかお忘れなく。
(2006.12.28発行のレポート33より、加筆訂正)
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