懐かしさこそ町づくりの原点
街路樹の赤い実をヒヨドリの群れがついばみ、赤いサザンカの花が咲いているのをみるのもいいのですが、今ひとつしっくりきません。
これだけ緑の多い島で、街路樹のことなど......といっても、やはり気になります。野にあるものを植えよというという気はないのですが、全国至る所、金太郎飴のように似たような花木を植えるのもいかがなものでしょうか。
観光、産業振興の視点から、屋久島の県道の街路樹に、山間部でリンゴツバキを、居住部でポンカンやタンカン、茶の木の植栽を提案したことがあります。県レベルでは採用されませんでしたが、かろうじて、上屋久町の単独事業で県道沿いに植えてもらったリンゴツバキが、季節になると花や実をつけて目を楽しませてくれます。
上屋久町商工会の「まちづくり委員会」で、宮之浦の市街地活性化事業に取り組んだときに、私有地に植えさせてもらったリンゴツバキも、いくらか生き残っています。同時に、個人の住宅の庭と道路の境界の植え込みの前栽や石垣、庭にある柑橘類を行政で指定して保存するという提案も行ないました。
この冬は気候のためか、柑橘類の色鮮やかで、目を惹き付けます。
街路に植えられた茶の白い花を愛で、香りを楽しみ、樹上で熟したポンカンやタンカンを子どもたちや旅の人、鳥たちと賞味することで、心和むことでしょう。
日に日に失われゆくものに愛着を感じるのは、年齢故でしょうか。
ふと懐かしさを感じ、やすらげる空間を維持、創出していくことこそ、「まちづくり」の原点であり、暮らす人も訪れる人も幸せになれると信じています。
(2007.1.19発行のレポート36より、加筆訂正)
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