兵頭昌明の四方談義 Vol.28

 

落枝は樹の寿命を保つ

台風4、5号の直撃は免れたものの、道路脇の木々の枝が折れたり、裂けたりした様子に自然の摂理を感じます。
日をおかず、またもや縄文杉の枝が折れたというニュースが新聞に取り上げられました。
この度は、人目につかないところに落ちたので、そのまま放置することに決まったそうです。先に落ちた「いのちの枝」は手厚く保護されて、今や縄文杉観光の先兵として「人寄せパンダ」の役をこなしています。
台風に限らず、強い季節風の後でも、徒長した枝が折れたり裂けたりするのはごく普通のことであり、それが樹木の寿命を保つ要因の一つであるとききます。台風後の木々を見ていると、そのことが素直に納得できます。
縄文杉だからこそニュースになるのでしょうが、そのことに若干の違和感を覚えるのは私だけでしょうか。

落ちた枝に大騒ぎする前に、入山数の規制に早急に取り組むべきです。
往年の美しさを失った日本最南端の高層湿原、花之江河の中を突っ切る木道を設置する話が持ち上がった際、「迂回路を作ろう」という私の主張はかないませんでした。理由は「現実に多くの人が入ってくる」というものでした。
観光を息の長い産業にと、本気で考えるならば、人数や行動の制限をタブーにしてはなりません。きこえてくるのは「入山料」や「入島税」といった「カネ」の話ばかり。同時に、あるいはその前に、考えるべきことがあるのではないでしょうか。
徒長した枝をそのままにしては、樹木本体の寿命を縮めてしまいます。観光もまた然り。政治もまた......そのように思います。

(2007.8.8発行のレポート42より、加筆訂正)

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