兵頭昌明の四方談義 Vol.32

 

屋久島銀行

「屋久島銀行」。
といってもお金を預ける銀行ではありません。
ものや人、時間や場所、知恵などが預けられた銀行です。
さまざまな資格や経験を持った人材が登録されている人材バンク。
「働き手」というだけでなく、農業や林業や漁業、郷土料理など、昔ながらの知恵を子どもたちや旅の人に語り、手ほどきできる高齢者が登録されているのもよいでしょう。

空き家バンクも、この島に必要とされています。3カ月、半年、1年、、、土地を買って永住という前に、「試しにこの島で暮らしてみたい」という若者と出会うことがたびたびあります。
また、年に1度使うか使わないかという空き家が多く存在しているのも知っています。
この2者をうまくつなぐことができたら、と想像します。

人材、空き家に限りません。
滅多に使われることのない公共施設、ポンカン園、タンカン園、ビワ園、茶園、漁船、不要な家具や衣類まで、すべてひっくるめて、ある人にとって持て余しているものが、ある人にとっては宝というのは、ままあること。
「山村留学」も、この制度の中での活動と位置づけてもよいでしょう。

 

この銀行の仕組みを考えるとき、もっとも大切なことは「信頼」です。
そしてその信頼を担うのは、行政しかないのではないでしょうか。
預ける人と借りる人との間を行政が仲介し、双方の「信頼」をさらに担保する必要があります。
貸す側には、一定の賃料が保証され、借りる側には一定期間内の使用が保証されて、双方安心が得られるのです。

各集落の中で使われないままに放置されて、今にも朽ち果てようとしている生活財や生産手段、知恵をはじめ、あらゆるものが活用されることを待ち望んでいるのです。
しかも一方には大量消費文化に疑問を持ち、そこから抜け出し、人間本来のくらしを営むことを願っているたくさんの人々が存在します。

年々その底力が弱っていくように思える各集落、合併によってさらに加速しそうな限界集落にくらす身としては、待ったなしです。
この仕組みができあがったならば、各集落の人口が増え、年齢構成が変わり、生産活動が生き生きと動き出すのではないでしょうか。
屋久島が直面している「少子高齢化」「産業構造再編」「一次産業再構築」問題を解決する糸口になるかもしれません。

 

こんな提案をすると、まず「●●という障害があって難しい」という反論が次から次へと出てくるのが常です。
「何が障害であり、どうしたら目標に到達できるか」という思考回路を作って、ぜひ「屋久島銀行」を創立しましょう。
がんばれ屋久島町職員!

(2007.11.19発行のレポート46より)

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