兵頭昌明の四方談義 Vol.33

 

今年の夢はゴミ拾いツアー実現

昨年は、屋久町・上屋久町のふたつの町が合併して屋久島町になり、新しい町長選挙が行なわれました。
候補者は4人で、奇しくも4人とも旅館業者でした。

当然、観光政策が選挙の争点になるものと思っていたら、全くの期待外れでした。

 

正月、各メディアは競って屋久島の映像を流していましたが、それに対する島外の反応は、屋久島の自然について賛美する一方で、きまってその荒廃を危惧するものでした。
しかし、地元の対応はスローペースと言うより、無策と言った方が良い状態です。

 

このところ、昔猟をしていた人たちの話を聞く機会がありましたが、その誰もが異口同音に、「昔の猟場は奥山であった」と話してくれました。
これは一体なにを示唆しているのか?
これら今昔を比較する研究などには、とんと出会ったことがないのが不思議です。

 

あるシンポジウムで、登壇したエコツアーガイドが「カヌーでお客を案内していると、川辺の薮の中にゴミが捨てられているのが目につきます」と言ったのを聞いて、思わず「気がついたら拾えよ」と言ってしまいました。

世は、産学官の協力により・・・と言われますが、ここ屋久島では産学官それぞれバラバラに、それも既得権益を競い合っているのが実態です。

 

新しい年の出発にあたり、年来暖めてきた奇抜な旅を、理屈を抜きに提案したいと思います。

それは「ゴミ拾いを目的にした旅行」を、産学官共同で企画実行する案です。

私自身、一年中閑があれば一湊の浜のゴミを拾っているのですから、ビール会社が宣伝のために後援する砂浜清掃行事を否定するつもりはありませんが、そんな柔な実践ではなく、もっとハードな実践を目的にした旅行を提案したいのです。

とりあえず、
対象場所は、海岸の岩場。
拾うモノは、流木や木質系の自然ゴミを除く物。
収集方法は、人力で、網カゴに集めるが、発砲スチロールゴミを必ず混載することで浮力をつける。
運搬方法は、筏にして海上輸送とする。
参加者は、全国から募集する。

これ以上の具体案は思いつかないのですが、
宿泊は公共の遊休施設を利用することで可能だと思います。

いかがでしょう。
誰かが、何処かで、仕掛けてはくれないものでしょうか?

負荷を少しでも減らす旅も良いでしょうが、むしろ積極的に環境維持の役に立つ旅こそが、エコツアーにふさわしいのではないでしょうか?

縄文杉にたどり着くよりも、宮之浦岳の頂上にたつよりも、参加者の達成感は得られると思うのは私の独りよがりでしょうか?

 

旅人のほとんどいないこの時期、船も飛行機も宿も飲食店もガラガラ、レンタカーは車庫の中、土産品店には閑古鳥が鳴き、ガイドはお茶を引いているのですが、県道を走るだけで、橋の袂で速度を落としちょっと気をつければ、オガタマの可憐な花が仄かににおい、ルビーのような紅い実を鈴なりに付けたイイギリやシロモタが、あるいは鮮やかな藤色のムラサキシキブやコムラサキシキブの塊が目に飛び込んで、岬に立てば、特別天然記念物のアオバトが眼前を横切り、振り向けば何処かに虹を見ることも希ではありません。
これこそが屋久島なんです。

かつて、お盆を過ぎて、海はやっと私たちの海に返っていました。
今やあらゆる屋久島が、正月過ぎのこの時期しか、私たちのもとに返ってこなくなりました。

そろそろおもねることや、外来の価値観を押し頂くことをやめて、産学官をつかって、私たちの思いを、地域エゴに、ローカルスタンダードに誇りを持って、堂々と主張しましょう。

ガードレールに腰掛けてエサをねだる猿は返上し、タイショウと呼ばれた時代の猿に戻りましょう。

(2008.1.26発行のレポート47より)

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