兵頭昌明の四方談義 Vol.34

 

種の絶滅は突然やってくる

山中のトイレのし尿を人力で運び出すための費用として、入山協力金の制度が設けられるそうです。

すでに起きている事柄に対応するためには、これしか方法がないといわれれば、「そうですね」としか返しようがないのですが、屋久島にとって「いつか来た道」、根本的な解決にはなりません。

花之江河に木道が設置された時と重ねてみてしまいます。
あの時も同じ理屈でした。
迂回路で誘導しようという案は、まったく取り上げられませんでした。
結果、花之江河の荒廃を招いたことは、誰の目にもあきらかです。

これとよく似た飛魚漁の昔話があります。
魚を入れすぎた網をひきあげる際に転覆してしまったり、魚を船に積みすぎて水船にしてしまったり......。
網に魚を入れたまま港に帰る途中、魚の勢いに負けて船が沈みそうになり、泣く泣く網を切って魚を逃がした話も......。

鹿児島に出かけた際、久しぶりに映画を観ようと、下調べなしにでかけると、上映時間が少し過ぎている上に満席でした。
あたりまえのことなので、別にいらだちも感じずに、次の回を待って観ました。
不完全なものを立ち見しては感動も半減します。

獲れるときに獲ってしまえ、明日のことはわからないんだから・・・と言いつつも、かつての飛魚漁は、産卵が終わるまでは決して網を入れさせないという節度がありました。
ポンカンやタンカンの栽培でも、良い商品を作るための摘果は常識です。
自然のシャクナゲだって表年と裏年があって、自分たちで調整しています。
人間だけが調整出来ない動物のようです。
飛行機や船で、あるいは宿で調整できないとしたら、入山あるいは利用制限で対処すべきです。

屋久島への一日あたりの搬出入可能人数は、3,220人。
宿泊可能人数はおよそ3,100人。
ここから議論を始めましょう。
登山道の利用数の制限は必要です。

種の絶滅は、ある時突然やってくると聞いたことがあります。
ある程度までは、ダメージを復元する力が働くのでしょうが、その限界を超えた時、一気に終りはやってくるそうです。

病んだ屋久島のままでは、健康的な未来の展望を開くことは困難です。
今ならまだ間に合う。
そう信じて、借り物ではない「議」を尽くしましょう。

(2008.3.31発行のレポート49より)

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