兵頭昌明の四方談義 Vol.36

 

自分で出したモノは自分で持ち帰れ

金沢に住む大学時代の友人から、40年ぶりに電話がかかってきた。
「近いうちにそちらに行くことになった。久しぶりに会いたいね」
「スケジュールは?」
「縄文杉登山のツアーに参加して」とのこと。

60歳代の団体を、雪の降り始めた縄文杉に連れていく旅行会社とは・・・、これを案内するガイドとは・・・、いろいろと考えさせられました。

需要がある限り、これに応える供給を生み出すべきである、という考え方もあるだろうが、一方で、過剰供給が過剰需要を生み出すという現実もあります。
この循環が始まると、自己増殖を繰り返しながら、どこまでも止まることなく進み、終いには破滅まで行き着いてしまいます。
屋久島の現状は、将にこの循環に入り込もうとしているように思えてなりません。

山岳ガイドのパイオニア、リーダーを自認する人が「現実にお客が多いのだから山岳部のトイレはもっと増設しなければならない」と宣ったそうである。
この輩など、屋久島の山にとって「忘恩の徒」であり、「忘島の徒」「忘国の徒」と言わざるを得ません。

いつから、こんな循環に入ってしまったのか、たぶん花之江河と小花之江河のど真ん中に「登山客に湿原が踏み固められるから」その対策として、環境庁が初めて屋久島に予算をつけて木道を敷設した時か、あるいは縄文杉にいろいろな策を講じ始めた時からか、あるいは登山道を木道化し始めた時か、いずれにしろ初めのボタンの掛け違えが、とんでもない結果をもたらしているのに、誰も目を背けて、この間違いを直視しようとしません。

私などが山登りを始めた頃は、先輩方に「猫の如く歩め」「入るときの荷物より、下るときの荷物を(ゴミで)増やせ」と教え込まれたものです。

日本アルプスと呼ばれる山岳部を縦走した人から聞いた話では、登山道の補修整備はそれぞれの山小屋の負担で行ない、捜索への協力も各山小屋が無償でやり、年間一千万円を超えることもあるそうです。

繰り返して言えば、山岳ガイドにとっての山、ダイビングガイドにとっての海は、百姓にとっての畑なのです。
飯の種である山や海を守るのは、あなた方の責務です。
「交通、宿、土産、飲食業界も同じだろう」という反論が聞こえそうですが、先ずはあなた方が先頭に立たなければなりません。
あなた方が、一番現状を熟知しているのですから、隗より始めよ!です。
パフォーマンスはもう沢山です。

観光ポイント、登山ルートに含まれる水系の麓に暮らす私たち一般住民が、なぜ糞尿まみれの水を飲まなければならないのですか?

いつまでも、繰り返し繰り返し言い続けます。
「自分で出したモノは、自分で責任を持って持ち帰りなさい!」

屋久島には、山ン神様も山姫女も海ンわろもいることを忘れてはいけません。

(2008.11.25発行のレポート51より)

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