木原滋文の島人コラム Vol.2

 

日本人と日本国民

「木原はナショナリストだからなあ」。
学生時代、同級生で作った同人誌の合評会での、私のつたない創作に対する友人の言葉だ。
余談になるが、彼は短期間、防衛庁長官に就任した。
長くその任を続けていられるような政治情勢だったら、日本は違う方向に向かったかもしれない。

ナショナリスト=国粋主義者=右翼の図式しかなかった私には、かなりショックだった。
地方の工場誘致に妥協せざるを得ない、老漁師の思いをテーマにした創作だった。
今になってわかるのは、彼の真意は、当時の私が持っていたナショナリストの概念とは違うものだったのだ。
今こそ大きな声で「私は日本人であり、日本を大切にしたいと思っています」と言いたい。

「屋久島九条の会」にかかわり、安穏と日本人=日本国民ではいられないことを感じた。
「日本は一国一民族であり、不沈空母だ」などという馬鹿げたことを、臆面もなくのたもうような総理大臣がいる国の国民ではいたくない。と言っても、日本に国籍がある以上は日本国民なのである。

外国に国籍のある日本人は、日本人でありながらもその国の法に律せられる。
しかし、同じ日本人でも、日本国籍を持つ日本人は、日本の法に基づいて、暮らしていかなければならない。
主権在民の憲法を、日本国民である日本人はもっと大切にしなければいけないのではないか。
かつて京都府知事を長年務めた蜷川虎三さんが府庁に掲げた、「憲法を暮らしに生か」さなければいけない。
「愛国心」を右よりの言葉で片付けるのではなく、「戦争をしない、させない愛国心」を主張する必要があるように思えてならない。
私たちは、日本国籍を持つ日本人なのだから。

 

●このページのトップへ↑

ホーム > 木原滋文の島人コラムINDEX >島人コラム Vol.2