兵頭昌明の四方談義 Vol.2

 

勝手に名前を変えないで!

11月17日、NHKの朝の番組をみていたら、
宮之浦の白谷雲水峡が
「もののけ姫の森」として紹介されていました。

宮崎駿監督が、白谷周辺で
映画「もののけ姫」の
森のイメージを得たことは事実として、
いつの間に白谷の森が「もののけ姫の森」に
すりかわってしまったのでしょうか。

友人にぼやいたら、
「今ごろ何いってるの。白谷のパンフレットには
   早くから『もののけ姫の森』は使われてるよ」
・・・・ とのこと・・・。

もともと「白谷雲水峡」とは
昭和49年、「ヤクスギランド」と共に
林野庁の自然休養林に指定される際に名付けられたようです。

林野庁によってつけられた名前とはいえ、
ここにきて突然「もののけ姫の森」とはむずがゆい。

「縄文杉」の発見者として知られる岩川貞次さんは、
亡くなるまで「あの杉は『大岩(おおいわ)杉』だ」
・・・・といい続けていました。

「岩川がみつけた、大きな岩のような杉」
・・・・という思いを込めた「大岩杉」が、
メディアによって「縄文杉」と紹介され、
島内外でそう呼ばれるようになったことへの無念さは
いかばかりでしょうか。

「一湊岳」の問題もしかり。
一湊集落のものと思われる「一品宝珠大権現(山の神)」は
国土地理院の地図にある「一湊岳」ではなく、
その近くの「営林岳」山頂に祀られているのです。

地元のお年寄りにいわせれば、
この「営林岳」が本当の「一湊岳」。
なんらかの理由、または間違いから
「一湊岳」と「営林岳」が入れ替わったものとみられます。

山や川、地名の多くに
古来からの呼び名を調査せずにつけたらしき形跡も見られます。
あきらかな当て字、不正確な漢字も。

こんなことがごく普通に、
何の悪意もなく、
積み重ねられているのです。

たかが名前というなかれ、
昔むかしの島人の暮らしを知る大切な手がかりなのですから。

(2005.11.28)

 

●このページのトップへ↑

ホーム > 四方談義INDEX > 四方談義 Vol.2